毎年秋になると、当スクールが主催するスリランカ研修ツアーを実施いたします。
私たちは日頃、スクールの講義を通じて、スリランカ人のアーユルヴェーダ医師であるパーリタ・セラシンハ先生から、その深淵なる知恵を学んでいます。しかし、知識として「頭」で理解していることと、その知恵が育まれた土壌に立ち、現地の風を浴びながら「五感」で体感することの間には、天と地ほどの差があります。
2025年のツアーに参加した卒業生が綴ってくれた旅行記をもとに、本場スリランカの魅力と、私たちが提案する「生命力(オージャス)を整える旅」の本質をお伝えします。
1. 旅の目的:なぜ今、私たちはスリランカへ向かうのか
現代社会は、かつてないほどの情報過多とスピードの中にあります。特に責任ある立場にいる方ほど、常に「思考」がフル回転し、神経系が過覚醒の状態にあります。アーユルヴェーダでは、こうした状態を「ヴァータ(風のエネルギー)」の過剰と捉え、放置すれば心身の不調や判断力の低下を招くと説いています。
スリランカという国は、不思議なことに、そこに降り立つだけでその高ぶったエネルギーを穏やかに鎮めてくれる力を持っています。
「本質(プラクリティ)」への回帰
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で「Ayur(生命)」と「Veda(科学・知恵)」を組み合わせた言葉。つまり「生命の科学」です。これは単なる健康法や、病気を治すための医学に留まりません。
「自分は本来どのような性質を持って生まれてきたのか(プラクリティ)」
「今の自分は、本来のバランスからどれだけズレているのか(ヴィクリティ)」
これらを正しく理解し、調和を取り戻すための、包括的な人生哲学なのです。
今回の旅の目的は、観光ではありません。日常の喧騒から離れ、自分の内側にある「生命の火」を再確認し、眠っていた五感を一つひとつ丁寧に呼び覚ます「リセット&リチャージ」のプロセスとも言えます。

2. 巨匠ジェフリー・バワが提唱した「自然との共生」という究極の癒やし
スリランカの魅力を語る上で、世界的な建築家ジェフリー・バワの存在を外すことはできません。彼は、世界中のラグジュアリー・リゾートに多大な影響を与えた「トロピカル・モダニズム」の開拓者です。
バワの建築哲学は、驚くほどアーユルヴェーダの思想と合致しています。それは「人間もまた、自然という大きな生態系の一部である」という真理を、空間を通じて体感させてくれるからです。
ヘリテージ・カンダラマ:森と岩に溶ける奇跡
世界遺産シギリア・ロックを望むこのホテルは、バワの最高傑作の一つです。ジャングルの中に突如として現れるその建物は、コンクリートの壁を緑の蔦が覆い尽くし、廊下には剥き出しの巨大な岩がそのまま配置されています。
特筆すべきは、バワが世界で初めて考案した「インフィニティ・プール」です。プールの水面と、その先に広がるカンダラマ湖、そして空。それらが一つに溶け合う景色の中に身を置くと、自分と世界を隔てていた「壁」が消えていくような感覚に包まれます。
夜、窓を開ければ、森の呼吸が聞こえてきます。朝には、野生の猿がテラスに現れることも。ここでは「文明」が「自然」を支配するのではなく、両者が手を取り合って存在しているのです。

ジェットウィング・ラグーン:静寂のシンメトリー
バワが若き日に手掛けたリゾート。100メートルにも及ぶ直線的なプールは、静寂そのものを具現化したかのようです。建築における「余白」がいかに人間の精神を安定させるか。この空間に身を置くだけで、散らばっていた思考の断片が整理され、心の波が凪いでいくのを感じるようです。
3. 「オージャス(生命力)」を高める本場のトリートメント体験
アーユルヴェーダのリトリート施設での体験は、私たちのスクールでの学びに血を通わせる、貴重な実践の場となります。
ドクターによるコンサルティング:自己対話の始まり
滞在は、アーユルヴェーダドクターによるカウンセリングから始まります。脈診や問診を通じ、目に見える症状だけでなく、その背後にある心理状態や生活習慣の歪みを読み解いていきます。
「今のあなたに必要なのは、これです」
そうして処方されるのは、数千年の歴史の中で検証されてきた薬草オイルと、一人ひとりに最適化された治療プログラムです。

究極のデトックス:ナスヤとオイルマッサージ
特に感銘を受けたのが、オイルを鼻から注入する「ナスヤ(点鼻法)」です。
「日本ではなかなか受けられないこの施術を受け、長年悩んでいた鼻の不調が、薬を飲まずにスッと消えていった」という体験談は、アーユルヴェーダが単なるリラクゼーションではなく、確かな臨床に基づいた「医学」であることを証明しています。
ナスヤは頭部の「カパ(重さ・停滞)」を取り除き、中枢神経系を浄化するとされています。施術後、視界がパッと明るくなり、思考のモヤが晴れるような感覚は、経験した者にしかわからない喜びです。
さらに、温かなオイルを全身に浸透させるアビヤンガ(マッサージ)。熟練のセラピストの手を通じて、オイルに含まれる薬草のエネルギーが皮膚を通り、深部組織へと届きます。それは、自分の身体を「魂の神殿」として慈しむ、神聖な儀式のようです。
4. 消化の火(アグニ)を整える「美食」の哲学
「私たちは食べたものでできている。しかし、それ以上に、私たちは『消化できたもの』でできている」
これがアーユルヴェーダの食事観です。どんなに良いものを食べても、消化力(アグニ)が弱ければ、それは毒素(アーマ)に変わってしまいます。
薬膳としてのスリランカ・カレー
スリランカの家庭料理は、まさに毎日食べる薬膳です。
• スパイスの調合:
ターメリック、コリアンダー、クミン、シナモン。これらは味付けのためだけでなく、消化を助け、炎症を抑え、代謝を高めるために計算されて組み合わされています。
• バリエーション豊かな野菜:
レンズ豆、カボチャ、オクラ、ジャックフルーツ。これらをココナッツミルクで煮込んだカレーは、驚くほど軽やかで滋味深く、毎日食べても飽きることがありません。
• キングココナッツの恵み:
「神からの贈り物」と呼ばれるキングココナッツ。その果汁は電解質を豊富に含み、熱帯の暑さで失われた水分とエネルギーを瞬時に補給してくれます。
「整える」食体験
ツアー中、私たちはほぼ毎食スリランカ料理をいただきましたが、不思議なことに胃もたれを経験した参加者は一人もいませんでした。それどころか、日を追うごとに肌の艶が増し、お通じが改善し、身体が軽くなっていくのを実感しました。
「食」とは、空腹を満たす作業ではなく、自分の内なる火を絶やさないための「供物」である。スリランカの食卓は、そんな大切なことを教えてくれます。

5. 聖地シギリア・ロック:自然の猛威と人間の尊厳
スリランカの象徴であり、最大のパワースポットとも言われる世界遺産「シギリア・ロック」。ジャングルの中に突如として現れる高さ約200メートルの巨大な一枚岩は、まさに地球のエネルギーが凝縮されたかのようです。
5世紀、父を殺した罪の意識と、弟からの復讐の恐怖に震えたカッサパ王は、この険しい岩山の頂上に壮麗な空中都市を築きました。
1,200段の階段を、汗をかきながら一歩ずつ登ります。足元がすくむような高所にある「シギリア・レディ」の壁画。そして、山頂に辿り着いた瞬間に目に飛び込んでくる、360度の熱帯雨林のパノラマ。
そこにあるのは、人智を超えた自然の威厳と、短くも激しく生きた人間の執念の跡です。
「自分という存在の小ささ」と「生命の力強さ」。その両方を同時に突きつけられたとき、私たちのちっぽけな悩みやプライドは、爽やかな風と共にどこかへ吹き飛んでしまいます。

6. サットヴァ(純粋性)に満ちたスリランカの人々と「アーユーボーワン」
アーユルヴェーダでは、心の性質を3つに分類します(トリグナ)。
1. サットヴァ(純粋性・調和・光)
2. ラジャス(激性・情熱・動乱)
3. タマス(惰性・暗黒・停滞)
私たちが目指すのは、ラジャスやタマスを鎮め、サットヴァを増やすことです。そして、スリランカという国には、この「サットヴァ」のエネルギーが満ち溢れています。
祈りのある暮らし
スリランカの挨拶「アーユーボーワン」。これには「あなたが健康で、長く生きられますように」という祈りが込められています。単なる「こんにちは」ではなく、相手の生命を肯定する言葉。
道端で目が合えば、誰もがニコッと微笑み、手を振ってくれる。真っ白な制服を着て、屈託のない笑顔で登校する子供たち。彼らの瞳の輝きに触れるとき、私たちは効率や利便性の追求と引き換えに、日本で何を失ってきたのかを深く考えさせられます。
物質的には決して豊かとは言えない地域もあります。しかし、そこには助け合いの精神と、今日という日を感謝して生きる心の余裕があります。
「自分を良く見せたい」「もっと手に入れたい」というエゴ(ラジャス)が削ぎ落とされ、ありのままの自分(サットヴァ)でいられる心地よさ。この精神的な充足こそが、スリランカの旅が「癒やし」以上の「変容」をもたらす最大の理由です。
7. 「マインドフルネス」の先にある、真の自由
今回の旅で感じた「思考の停止」と「五感の解放」。これは、現代における最高のリハビリテーションだと言えるでしょう。
情報という毒素(アーマ)を絶つ
私たちは日々、スマートフォンの画面を通じて、自分とは関係のない遠くの出来事や、他人の煌びやかな生活、あるいは将来への不安といった「情報のゴミ」を大量に摂取しています。これらは精神的な未消化物質(アーマ)となり、私たちの直感や生命力を鈍らせます。
スリランカの滞在中、電波の届かない森の中や、波音しか聞こえないリゾートで過ごす時間は、まさに「情報のファスティング」です。
思考を止めることは難しい。しかし、美しい夕陽に見惚れたり、美味しいスパイスの香りに没頭したり、鳥の声に耳を澄ませたりするとき、私たちの思考は一時的に停止し、代わりに「感覚」が主役になります。これこそが、動的な瞑想、すなわち「マインドフルネス」の状態です。
帰国後に始まるアーユルヴェーダ
アーユルヴェーダの治療は、リトリート施設を出たところで終わりではありません。むしろ、そこからが本番です。
研ぎ澄まされた五感を持って日本に帰ったとき、今まで当たり前だと思っていた食事の味、職場の空気感、自分の感情の揺れが、以前とは違って感じられるはずです。
「今の自分にとって、本当に必要なものは何か」
「何を手放し、何を大切にすべきか」
その答えを、頭ではなく「魂」が知っている状態。それが、アーユルヴェーダを体感した後に訪れる、真の自由なのです。
結びに:生命力(オージャス)を輝かせる人生のために
3,500年前に記されたアーユルヴェーダの聖典には、こう綴られています。
「有益な人生、無益な人生。幸せな人生、不幸せな人生。人生にとって何が良いもので、何が悪いのか。それを計る物差しであり、人生をいかに楽しむかを教えるもの。それがアーユルヴェーダである」
この言葉は、現代を生きる私たちへの力強いエールです。
私たちの命は、誰かと比べるためにあるのでも、数字を追うためにあるのでもありません。自分らしく、健やかに、この瞬間の幸せを十分に味わうためにあります。
今回のスリランカの旅を通じて、私たちは「生命の力強さ」を再確認しました。
もし、このブログを読んで、心のどこかが微かに共鳴したなら。それは、あなたの内なる生命力が「目を覚ましたい」と合図を送っているのかもしれません。
カレッジではこれからも、伝統的な智慧と現代のライフスタイルを繋ぎ、一人ひとりの生命力(オージャス)が輝くための学びと体験を提供し続けてまいります。
あなたの人生にとって、本当に大切なものは何ですか?
その答えを探しに、ぜひ私たちと共にアーユルヴェーダの門を叩いてみてください。
ありのままの自分を、最高に輝かせて。
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