夜眠りに入る時間と朝起きる時間について書きました。
宇宙のリズムと「向いている行動」
ヒント7では、雨の音という自然の循環に耳を澄ませ、私たちの感覚器官を大自然のリズムと同調させる知恵についてお話ししました。
今回は「人間と宇宙は同じである」というアーユルヴェーダの大原則を、私たちが毎日繰り返している「1日の過ごし方」という視点からさらに深めていきたいと思います。
私たちは誰もが、地球が太陽のまわりを周り、その地球のまわりを月が周るという、壮大な宇宙の営みの中で生きています。私たちは日々の生活の中で、自覚している以上にその運行の影響を強く受けています。その影響によって、アーユルヴェーダでは1日の時間帯によって、それぞれ心身のメカニズムに適した「向いている行動」があると考えます。
近年、現代科学の分野でも「時間生物学」という研究が進み、時間帯による生体リズムの変化が科学的に証明されるようになってきました。アーユルヴェーダでは今から5000年も前の時代からすでにその仕組みを理解し、日常生活の養生として実践してきた歴史があります。
今回は心身の健康の土台となる、最も重要な「朝起きる時間と夜眠る時間」について紐解いていきましょう。

朝6時までの起床が、1日の軽やかさを決める
アーユルヴェーダにおいて、朝起きるのに最も適しているとされる時間は、「日の出の96分前(ブラフマ・ムフルタ)」と言われています。これは神聖な知恵の時間とされていますが、現代の都市生活において毎日これを実践するのは、現実的にはなかなか難しいものです。
そこで基準となるのが、「朝の6時」という境界線です。
アーユルヴェーダの「3つのエネルギー(ドーシャ)」の理論では、時間帯によって優位になるエネルギーが変化すると考えます。朝の「2時頃〜6時頃」は、軽快さや運動のエネルギーである「ヴァータ」が高まる時間帯です。このヴァータの時間帯のうちに目覚めると、その日一日を軽やかにスタートさせることができます。
一方で、6時を過ぎてしまうと、今度は結合や重さのエネルギーである「カパ」の時間が強くなります。6時を過ぎてから布団の中でグズグズしていると、体に重だるさが残り、起きるのがつらくなってしまうのは、このカパのエネルギーの影響を強く受けてしまうためです。日の出の96分前とまではいかなくとも、まずは「朝6時までには起きること」が理想的な目安となります。
夜22時からの睡眠が、心身を修復する
起きる時間と同様に大切なのが、夜眠る時間です。
夜中の「22時〜2時」は、アーユルヴェーダでは消化や代謝のエネルギーである「ピッタ」が高まる時間帯とされています。この時間帯にしっかりと睡眠状態にあることで、体内では細胞の新陳代謝が最も活発に行われます。
現代医学の視点で見ても、この時間帯は深いノンレム睡眠に入りやすく、成長ホルモンが分泌されて一日の肉体疲労や脳の疲労を効率的に回復しやすい時間であることが分かっています。つまり、体の修復機能を最大限に活かすためには、夜の22時から24時までの間には、完全に床に入っていることが理想なのです。
これらをまとめると、現代生活における基本のリズムとしては、24時から朝6時までの時間帯を睡眠にあて、それぞれの体質や体調に応じて、就寝時間をさらに前倒ししていく工夫をすることが、健康的なリズムを整えるセルフケアとなります。
10分ずつの微調整から始める
これら一連の時間論を耳にすると、忙しい毎日を過ごされている現代人の中には、「22時に寝て6時前に起きるなんて、到底無理だ」「スケジュール的に厳しすぎる」と感じる方も多いのではないでしょうか。
確かに、これまでの生活習慣からいきなり数時間も生活をシフトさせようとすると、身体に大きな負担を強いることになり、結果として長続きしません。大切なのは、完璧な理想をすぐに追い求めることではなく、少しずつ自分のリズムを自然の巡りに近づけていくことです。
まずは、眠る時間と起きる時間を「10分だけ」早めることから始めてみませんか。
夜は、いつもダラダラと見てしまうテレビやスマートフォンの画面を10分だけ早めに切り、布団に入ります。そして朝は、目覚まし時計の設定をいつもより10分だけ早めにセットする。これだけで構いません。
10分早まったリズムに身体が慣れてきたら、また少し、さらにまた少しと早めていきます。
ほんのわずかでも、自分の体を自然のリズムへと寄り添わせることができたとき、目覚めのすっきり感や日中の疲れにくさなど、気づかないうちに心と体に良い変化が現れるはずです。大宇宙の規則正しいリズムを、あなたの小宇宙へと優しく取り入れていきましょう。
【今日の一言】
「急激な変化ではなく、10分の微調整を。夜のスマホの画面や本を10分早く閉じ、朝の目覚ましを10分早くするだけで、身体は自然のリズムを思い出し始めます。」
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