体調が崩れた時のバランスの整え方について書きました。
目次
エネルギーのバランスを知って、事前の予測と予防をする
ヒント11、12にて、私たちの心と体を動かしている「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という3つのエネルギー(ドーシャ)について、それぞれの肉体的な特徴や心の個性の現れ方をお話ししました。
これらのエネルギーのバランスの違いによって一人ひとりの体質が決まっているのですが、私たちが心身の体調を崩すときというのは、このいずれかのエネルギーが過剰に増えすぎて(これをアーユルヴェーダでは「増悪・ぞうあく」と言います)、全体の調和が崩れている状態を指します。
例えば、空気の冷たさや乾燥が厳しくなる秋冬には「ヴァータ(風)」のエネルギーが自然界でも増大するため、生まれつきヴァータの質を多く持つ人は特に体調を崩しやすくなります。メンタル面でヴァータの傾向が強い人は、この時期に心が落ち着かなくなったり不安になりやすかったりします。
このように自分の体質と季節の循環を知っておくと、「今は自分にとって体調を崩しやすい時期だから、少しペースを落とそう」といったように、事前の予測と予防ができるようになります。
なお、自分の中で最も割合の高いエネルギーが一番バランスを崩しやすいとされていますが、日々のストレスや環境によっては、それ以外のエネルギーが増えすぎて不調を招くこともあります。そのため、体質の型にとらわれすぎず、現在の自分の状態を冷静に観察することも大切です。
では、実際にどれかのエネルギーが増えすぎてバランスを崩していると気づいたとき、私たちはどのように対処すればよいのでしょうか。その具体的な調整の方法を紐解いていきましょう。

「逆の性質」を取り入れて天秤を戻す
アーユルヴェーダには、「増えすぎたエネルギーの性質と『正反対の性質』を生活に取り入れることで、過剰なものを鎮静し、全体のバランスを整える」という大原則があります。
このアプローチを実践するためには、それぞれのエネルギーがどのような「性質(グナ)」を持っているのかを知っておく必要があります。3つのエネルギーの主な性質を分かりやすくまとめると、次のようになります。
•ヴァータ(風):冷・乾・軽・動(不安定)
•ピッタ(火):温・油・軽・鋭
•カパ(水・地):冷・油・重・安定
これらの性質が過剰になったとき、私たちはその反対の要素を日常の衣服、食べ物、飲み物、過ごし方などから補っていくことになります。
1. ヴァータ(風)が増えすぎているとき
ヴァータが高まっているときは、身体が冷え、乾燥し、心身がそわそわと落ち着かなくなります。そのため、正反対の「温・油・重・安定」の要素を取り入れます。
•具体的な対処法: 温かい衣服を身につけて寒さから身を守り、身体を温める根菜類などを食事に取り入れます。冷たいものではなく温かい白湯を飲み、外出を少し控えて家で静かに過ごしたり、ゆったりとした深呼吸を心がけたりして「安定感」を取り戻します。
2. ピッタ(火)が増えすぎているとき
ピッタが高まっているときは、体内に熱がこもり、肌に赤みが出たり、心がイライラと攻撃的になったりします。そのため、正反対の「冷・乾・重・鋭くないもの(穏やかさ)」の要素を取り入れます。特に夏に乱れやすい性質です。
•具体的な対処法: 風通しの良い涼しい服装を選び、汗をこまめに拭き取ります。食事では、体に熱を溜め込みやすい刺激物(辛味・酸味・塩辛味の強いもの)を控え、マイルドな味付けを心がけます。呼吸もゆったりと落ち着いて行います。「鋭さ」の反対は「穏やかさ」です。ピッタが増えているときは、競争やジャッジすることから離れ、心を穏やかに保つことが最も効果的な養生になります。
3. カパ(水・地)が増えすぎているとき
カパが高まっているときは、身体に余分な水分が溜まってむくみ、だるさや強い眠気が生じて、怠惰になりやすくなります。そのため、正反対の「温・乾・軽・動」の要素を取り入れます。現在の梅雨の時期に乱れやすい性質です。
•具体的な対処法: カパは「重さ」と「停滞」が主な特徴であるため、身体を内側から温めつつ、軽いウォーキングなどの運動を意識的に生活に取り入れて身体を動かします。少し早めのテンポの呼吸法を行うなどして、心身に程よい刺激を与えることも有効です。食事は消化に良い「軽めのもの」を選び、代謝を促すために適度なスパイス(辛味・苦味・渋味)を取り入れると良いでしょう。
1日の終わりに、自分の現在地を振り返る
今のあなたの心と身体は、どのエネルギーが少し過剰になっていると感じるでしょうか。そして、どのような「性質」を日々の暮らしの中にプラス(あるいは引き算)したら心地よくなりそうでしょうか。
私たちの心身は毎日同じではありません。天候や人間関係、食べたものによって、エネルギーの天秤は常に細かく揺れ動いています。
まずは1日の終わりに、今日という日を少しだけ振り返ってみてください。「今日はイライラしやすかったからピッタ(火)が増えていたな、明日は少し静かに過ごそう」「今日は雨で身体が重かったからカパ(水)が溜まっていたな、明日の朝は白湯を飲んで少し動こう」というように、その日の乱れに気づくだけでも、明日からの過ごし方を自分で調整する確かなヒントになります。
それぞれのエネルギーが乱れてしまう詳しい原因や、より具体的なセルフケアの対処法については、これからの連載で順をおってお伝えしていきます。
まずは今夜、ご自身の内側にある性質を静かに見つめる時間を作ってみてはいかがでしょうか。
【今日の一言】
心身のバランスが崩れたときは、今の自分と『真逆の性質』を暮らしにひとつ足してみましょう。その小さな工夫が、本来の健やかさへ天秤を戻す鍵になります。
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