アーユルヴェーダにおいて「奇跡のオイル」と言われるギー。その起源から具体的な効果、さらには「オージャス」との関係までを徹底解説します。ギーは、消化力の向上や免疫力の強化、アンチエイジング効果など、健康や美容において欠かせない栄養素が豊富に含まれた万能オイルです。
本記事では、ギーの正しい使い方や選び方、自宅で作る際のポイントなど、日常生活に取り入れるための実践的なアドバイスを詳しくご紹介します。健康的なライフスタイルを目指す方には必読の内容です。
ギーとは何か
その起源と定義
ギーはアーユルヴェーダで何千年もの間、用いられてきた油です。無塩バターを加熱し、水分や不純物を取り除いた黄金色の油で、ラクトースやカゼインも除去されるため、乳糖不耐症の方にも適しています。その名はサンスクリット語の「グルタ(輝く)」に由来し、「体と心を輝かせるオイル」として知られています。
アーユルヴェーダでのギーの位置づけと歴史的背景
アーユルヴェーダでは、ギーは「最上級の油」として扱われてきました。ヴェーダ時代から、食事だけでなく儀式や治療にも用いられ、「オージャス」を高めるものとされてきました。また、ギーは消化を助ける軽い油として、食材や治療法の中核をなしてきました。
ギーの多岐にわたる効果
免疫力の強化と病気予防
ギーに含まれるビタミンAやE、抗酸化成分は免疫系を強化します。また、共役リノール酸が炎症を抑え、健康な細胞の維持をサポートします。
脳機能の活性化と精神安定
ギーは「精神を安定させ、知力を向上させる」とされています。脳に必要な栄養を供給し、ストレスを軽減する働きがあります。
アンチエイジングと美肌効果
抗酸化作用のあるギーは細胞の老化を防ぎ、肌の保湿力を高めます。日常的に摂取することで、弾力のある肌と健康的な外見を保つ手助けをします。
消化力のアップと腸内環境の改善
ギーは消化を活性化し、腸内環境を整える効果があります。また、短鎖脂肪酸が腸内の悪玉菌を抑え、善玉菌を増やす働きをします。特に夜のホットミルクに混ぜて飲むことで、翌朝の排便がスムーズになることが期待できます。
不眠症の改善と睡眠の質向上
ホットミルクと一緒に摂るギーは、不安を和らげ、入眠を助ける効果があります。特にヴァータ(風)のエネルギーが過剰な人に適しています。
オージャスとギーの深い関係
オージャスとは:生命エネルギーの概念
オージャスは、アーユルヴェーダで「活力素」と呼ばれ、心身の健康を保つための根本的な要素とされています。この概念は、現代医学でいう免疫力や体力、さらには精神の安定性を包括したものです。
オージャスは体内で消化された栄養が「精髄」として凝縮されることで形成されるとされ、全身の調和と活力を高める役割を果たします。サンスクリット語で「光り輝く」という意味を持つオージャスは、活力と幸福感が高まる状態を象徴します。オージャスが不足すると、ストレスや病気に弱くなり、心身のバランスが崩れる原因になるため、これを養うことがアーユルヴェーダの重要な目的となっています。
ギーがオージャスを増やす理由とそのメカニズム
ギーがオージャスを増やすとされるのは、ギーが持つ優れた消化性と栄養素によるものです。ギーに含まれる中鎖脂肪酸や短鎖脂肪酸は、胃腸に負担をかけずにエネルギーに変換されやすいため、体内の消化プロセスをサポートします。この効率的な消化によって得られるエネルギーが、オージャスの生成を助けます。
また、ギーは抗酸化作用を持つビタミンAやEを豊富に含み、細胞の老化を防ぎながら免疫力を高めます。さらに、アーユルヴェーダでは、ギーの穏やかな性質がピッタ(火)の過剰を抑え、心を落ち着けることで、精神面からもオージャスを支えると考えられています。
このように、ギーは身体と心の両方にポジティブな影響を与える、まさに「活力を高める万能油」です。
ギーの選び方と保存方法
高品質なギーの見分け方:オーガニック
やグラスフェッド製品の選択
最近ではさまざまなギーが出回っていますが、その中で本当に良質なものを選ぶことがオージャスを増やす鍵となります。高品質なギーは、無塩バターを使用し、化学添加物が一切含まれていない純粋な製品です。
特におすすめなのが「グラスフェッド(牧草飼育)」の牛から得られたバターを使用したギーで、これは栄養価が非常に高く、オメガ3脂肪酸やビタミンAが豊富に含まれています。また、「オーガニック認証」がある製品は、化学肥料や農薬の影響を受けずに製造され安全です。
もちろんご自宅の近くでグラスフェッドバターが見つからない場合には、無塩バターを購入されれば問題ありません。様々な会社の商品がありますので、どの無塩バターがおいしくできあがるのかを比べてみるのも楽しいですね。
自宅でのギーの作り方:手順と注意点
ギーは市販の製品を購入するだけでなく、自宅で簡単に作ることもできます。無塩バターを弱火で溶かし、焦がさないように見守ります。バターが溶け、大きな泡がプツプツとした小さい泡に変わり、鍋の側面に少し焦げがつきそうな直前で火からおろします。最後にコーヒーのフィルターなどで不純物を取り除くことで、透明で黄金色のギーが完成します。この過程で香ばしい香りが広がり、手作りならではの新鮮なギーが得られます。
作る際の注意点としては、火加減を一定に保ち、焦がさないようにすることが大切です。また、できあがったギーは清潔なガラス容器に保存し、直射日光を避けて常温で保管してください。手作りギーは添加物が含まれず、より安全で高品質なオイルと言えます。
ギーの保存方法と賞味期限
ギーは酸化しづらく、適切な保存方法を守れば長期間使用できます。常温保存が可能ですが、湿気や直射日光を避けた冷暗所で保管するのが理想的です。日常、清潔なスプーンを使って取り出せば、開封後でも半年から1年ほど保存が可能です。実際にはそのおいしさや身体の変化から、あっという間に使い切ってしまうことも多いのですが、風味を損なわないためにも、なるべく早めに使い切ることをおすすめします。色や香りに異常が生じた場合は使用を避けた方が良いでしょう。
ギーを使用する際の注意点
適切な摂取量と過剰摂取のリスク
ギーは栄養価が高いため、摂取量を適切にコントロールすることが重要です。1日あたり大さじ1〜2杯が理想的な摂取量とされていますが、特にカロリー摂取を制限している場合や、コレステロール値が高い方は摂り過ぎに注意が必要です。過剰に摂取すると、体重増加やコレステロール値が上がる可能性がありますので、適量を守ることが大切です。
体質別の使用方法:ドーシャに応じたアドバイス
アーユルヴェーダでは、人それぞれの体質(ドーシャバランス)に基づいてギーの使用法を調整することが推奨されています。乾燥しがちなヴァータ体質には、ギーは潤いを補給し、冷えを和らげる効果があります。また、炎症や熱を持ちやすいピッタ体質には、ギーの熱の鎮静効果が適しています。ただし、カパ体質の場合は、ギーの重性という性質が体に負担をかける可能性があるため、控えめに使用するのが良いでしょう。
アレルギーや特定の健康状態に関する注意事項
ギーはラクトースやカゼインを除去しているため、多くの乳糖不耐症の方にとって安全ですが、乳由来のアレルギーを持つ方は注意が必要です。また、糖尿病や心疾患など、特定の疾患がある場合は、ギーの摂取が適切かどうかを医師に相談することをおすすめします。
ギーを取り入れたライフスタイルの提案
毎日の生活にギーを取り入れる習慣づくり
ギーは忙しい方でも無理なく取り入れられる万能油です。ここでは日々の生活で簡単に取り入れられる例をいくつかご紹介します。
①朝、温かい白湯やコーヒーに小さじ1杯のギーを加える。
胃腸を穏やかに目覚めさせ、消化力を高める効果があります。
②料理にひとさじ加える
ギーは高温調理でも栄養が損なわれにくく、炒め物やスープにも最適です。栄養価が増すだけでなく、体に負担の少ない脂質を摂取することが可能です。また、料理の仕上げにひとさじ加えると、風味が深まります。みそ汁に入れてもコクが出ておいしくいただけます。
③ご飯を炊く際にギーを少量加える
お米がよりしっとりとした食感になります。
1日の摂取量は大さじ1~2杯が適量です。日々の習慣に少しずつ取り入れることで、無理なく続けられることが嬉しいですね。
ギーを活用したアーユルヴェーダ的セルフケアの実践
ギーは、食事だけでなくセルフケアにも幅広く応用できます。肌に塗ることで保湿や赤みの軽減に効果があります。乾燥した肌にギーを塗り、20分ほどおいた後にホットタオルで拭き取ることで、もちもちとした潤いのある滑らかな肌を手に入れることができます。また、髪に使用すれば、栄養が与えられ、乾燥を防ぎツヤのある仕上がりになります。
マッサージオイルとしても使用が可能で、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動性を改善します。アーユルヴェーダの治療の一環としても使用されることが多く、リラックス効果があります。
さらに、アーユルヴェーダのユニークなケア方法として「ネートラ・タルパナ」があります。これは温めたギーを目に適用してドライアイや視力改善を図る伝統的な方法で、目の健康をサポートします。特徴的な見た目から、ソーシャルメディアでも話題になったことがあるようです。但し、「ネートラ・タルパナ」は、アーユルヴェーダでは治療とされていますので、医師による施術が推奨されています。
これらのセルフケアを通じて、外見だけでなく内面からの健康と美しさを実感できるでしょう。
ギーを通じて得られる心身の調和と健康維持
ギーを日々の生活に取り入れることで、このようにたくさんの健康効果を得ることができます。
消化力が高まり、体内の栄養吸収がスムーズになるため、エネルギー不足や疲労感の解消につながります。秋から冬にかけての消耗に悩んでいる方にも大変おすすめです。
また、ギーには心を穏やかにする働きがあり、ストレスの多い日常生活でも、リラックスと心の安定をもたらしてくれます。さらに、ギーに含まれる抗酸化物質や必須脂肪酸が免疫力を高め、風邪や病気に負けない強い体を作ります。
このようにギーを使って心身のバランスを整えることで、調和の取れた健康的なライフスタイルを築くことができ、日常生活の中で、より充実感や幸福感を味わえるようになるでしょう。
ギーを取り入れることで得られるのは、単なる健康以上のものです。それは、心身の調和を取り戻し、自分らしく生きるための土台づくりでもあります。はじめは「作るのが面倒だな」というイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思います。しかし実際にあなたのライフスタイルにギーを取り入れることで、より豊かで健やかな毎日を楽しむことができるはず。ぜひ一度作ってみて、その効果を確かめてみてください!
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ライター&編集担当
東京都出身。気になることはすぐ確かめたくなる好奇心旺盛のヴァータ体質。
misaki 記事一覧へコロナ禍での体調管理をきっかけにアーユルヴェーダに出会う。自律神経の乱れやPMSなど、それまで悩んでいた不調にも対処できることがわかり、学びを深める。知識が増えるにつれ体調を崩すことが激減。身体が弱いと思っていたがセルフケア不足だったことに気づく。
現在は自分の体の変化を楽しみながらアーユルヴェーダを実践中。
おだやか、ていねい、マイペースな人生を送ることが目標。英国アーユルヴェーダカレッジ56期卒業
アーユルヴェーダビューティーセラピスト/ライフカウンセラー